刺さる歌詞とメロディー 昭和歌謡に酔いしれた夜

 レコード人気がここ数年高まっていることは、我々の「レトロイズム」でも、何度か紹介してきた。人々は少なからず何らかの欲求を秘めて日々生活している。恋愛、名誉や名声、お金などなど。しかし、現実は上手くいかないことが多い。そんな時、満たされない心を埋めてくれるがレコードで聴く歌謡曲だったのである。

 冒頭でも書いた、居酒屋での時間は、今考えても理屈抜きに楽しかった。食べ物や飲み物も懐かしいものを出しているという部分はあるが、BGMとして流れていた音楽の力が大きいと我々は感じた。飲んでいる2人の気持ちが話とは別にシンクロしていくのを実感せざるを得なかった。実はその時我々は割とシビアな仕事絡みの論争をしていたのだが、その心地よさが、会話をスムーズに進ませてくれた。昭和の音やグッズに囲まれた落ち着ける空間のおかげである。

 そもそも、今、「歌謡曲」というジャンルが自体が存在しているかも分からない。しかし、高田馬場にある歌声喫茶「ともしび」でも、カラオケでも普通に歌われている。特におっさんが集まると、その傾向は強くなる。

 「昭和の歌謡曲」、まだまだ健在なり!

文・今村博幸 撮影・JUN