刺さる歌詞とメロディー 昭和歌謡に酔いしれた夜

 東京・鶯谷の「歌謡曲カフェLOVERS」の店主・北島慶一さんが、面白いことを言っていた。「昭和の歌謡曲は、歌詞がはっきり言ってエロかった」。例えば、山口百恵の「ひと夏の経験」(詞・千家和也、曲・都倉俊一)の出だしや「美・サイレント」の歌詞は、かなり際どい。後者は最強コンビである阿木燿子と宇崎竜童の名作である。

 演歌でも、殿様キングスの「なみだの操」(詩・千家和也、曲・彩木雅夫)は、女性の情念と古風な精神性とが共に短い歌詞の中にギュッと詰まっている。ちびまる子ちゃんが父親と風呂でよく歌っているが、彼女にはその本当の意味は分かっていないはずだ。しかし、気持ちよさそうに歌う姿は、楽曲の力がそうさせるのに違いない。北島さんは言う。「僕が好きなのは、中条きよしの『うそ』(作詞は山口洋子)。『折れたタバコの吸い殻で、あなたの嘘がわかるのよ🎵』。深い色気がにじんでいますよね。どこから発想されたのか? 作詞家の才能を感じられずにはいられません」。言葉選びの才能が際立つ歌詞である。

ジュークボックスは魔法の箱。どの曲も懐かしい。聴けば、かつての情景が飛び出してくる⁉︎