
レトロ建築探訪其之参
東京(原宿→外苑前→渋谷) retroism〜article149〜 国立代々木競技場第一体育館(原宿) 国立代々木競...
visiting old, learn new
昭和の歴史的建造物や著名な建築家が手がけた作品をはじめ、思わず足を止めてしまうようなトンデモ建築まで、令和の街角にひっそりとたたずむ遺構を紹介する。レトロ建築の魅力を再発見しよう!
東京(原宿→外苑前→渋谷) retroism〜article149〜 国立代々木競技場第一体育館(原宿) 国立代々木競...
ネット通販の台頭によって、買い物の楽しみ方は様変わりしつつある。かつては人と対面するのが当たり前だった。特に百貨店は、店員とのコミュニケーションの中でいろいろと相談や雑談をして、求める商品を探し、迷いながら購入する醍醐味(だいごみ)があった。客もおめかしをして訪れた。それは今も変わらない。買い物好きのご仁にとっては、最も幸せな時間のひとつだ。
産業革命以降、世界の状況は一変し建物の様相も大きく様変わりした。建築家たちは、近現代化という流れの中で、あらゆる可能性を模索しながら、試みを繰り返してきたのである。背景には工業技術の進歩があったが、建築基準法をはじめとする限られた条件の中で、どんなことをするのかといった、人間の創造力や発想、恣意(しい)までも結びつけ創作に励んだ。
全国どこの街を歩いていても、景色がさほどかわらない今の日本。同じような建物、全国展開している大型店舗や飲食チェーン、コンビニなど、その街「らしさ」が消えていくのは寂しい。東京でも同じことは起こっている。しかしである。たまたま見かけた建築物に、思わず足を止めてしまうこともまだまだある。昭和に建てられた建造物が現役で頑張っているのだ。
古(いにしえ)を疎かにしない思想をもち、1954(昭和29)年の創業以来、高き誇りを掲げ続ける。東京・お茶の水にある「山の上ホテル」はそんなホテルだ。建物の前に立っただけで伝わってくる圧倒的な存在感は、ロビーを通りレストラン、カフェ、そして客室に向かうごとに、心地良さとなって客に降り注ぐ。
見上げると思わず息を飲む外観だ。モルタル塗りの壁面に金色で大きく書かれた「パリー」の文字が燦然(さんぜん)と輝いている。