偶然の出会いが奇跡呼ぶ ライトの希少な学校建築

自由学園明日館(東京・池袋)

retoroism〜article228

 東京・池袋の喧騒(けんそう)を離れ、閑静な住宅街にたたずむ「自由学園明日(みょうにち)館(以下明日館)」は、凛(りん)とした情調に包まれている。


現在は喫茶が楽しめる食堂。温かい昼ご
    はんを生徒たちは自分で作って食べていた 

 芝生越しに見える建物は大きな窓のホールを中心にコの字型に配置されており、フランク・ロイド・ライト建築の特徴の一つである「プレーリーハウス(草原様式)」を採用。軒高は低く、水平の線が強調され素朴な美の光を放つ。中央棟と西教室棟が1922(大正11)年、25(同14)年には東教室棟が完成した。

これぞライトのプレーリーハウスと呼べる様式。前面に広がる芝とのコントラストも雰囲気を盛り上げている

 明日館は、羽仁もと子、吉一夫妻により女学校として開校した。ジャーナリストだった二人は、婦人之友社という出版社を起こし、雑誌「家庭之友(後の婦人之友)」を発行していた人物である。同館広報担当の岡本真由美さんが静かに解説を始めた。

(上)右手の壁に見える、聖書の「出エジプト記」をモチーフにした絵は、生徒たちが描いたものだ。以前はしっくいで隠されていた。(下)六角形の背もたれの中心には、水平のスリット。建物と家具との調和が考えられている。デザインはライトか遠藤新かは不明