偶然の出会いが奇跡呼ぶ ライトの希少な学校建築

 現在の明日館はコンサートなどのイベントや結婚式に使われている。中央にあるホールは、女学校当時、毎朝の礼拝が行われていた。南面の窓には、建物のデザインの特徴の一つである幾何学模様の窓が備えられている。数段の階段を上がった場所にある食堂は、現在喫茶コーナーとして見学者を迎える。ライト建築の特徴である、幾何学的な装飾を室内にも取り入れた変化に富んだ内部空間は、外からの光を巧みに取り込むように設計された。当時から残る照明はライト自身がデザインしたものだ。創立者である羽仁もと子、吉一夫妻の写真が、講堂の正面脇の柱に飾られている

 「この素晴らしい内部空間を100年以上たった現在でも体験できることが、ここが現存している一番大きな意味だと思います」。岡本さんは続ける。「来館された方には、自分の感覚を呼び覚まして、この空間を味わっていただきたいと思います。そして、自分だけのお気に入りの場所を見つけてもらえたらうれしいです。また、池袋の繁華街にほど近いことで、歴史や時の流れをコントラストで体感できることも魅力のひとつですね」

階段以外の床は全て同じ高さの大谷石が使われている

 奇跡はきっと存在する。考え方によっては、必然なのかもしれないと、明日館の歩みを見ると感じずにはいられない。

 フランク・ライド・ライトは生涯ほとんど学校の設計を手掛けてはいない。そんな数少ない貴重なライトの学校建築が日本に現存しているのも単なる偶然ではないだろう 。

じゆうがくえん みょうにちかん
東京都豊島区西池袋2ー31ー3
📞:03・3971・7535
開館時間:午前10時〜午後4時(入館は同3時半まで)
夜間見学日(毎月第3金曜日)午後6〜9時
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)不定休有・要事前確認
料金:喫茶付見学(焼菓子付き)800円、夜間見学(お酒付き)1200円、建物見学のみ500円
文・今村博幸 撮影・JUN