活版印刷の懐かしい音をBGMにカフェでまったり

 佐藤さんにとって、面白いと感じているのは、刷っていく過程が見られるところだと、引き締まった表情で語った。「それと、一枚ずつ微妙なムラが出たりするので、出来上がった印刷物に対して、どこかで僕の思いが乗り移っている感覚があることです」。製品に愛着が湧くのだ。名刺もよく見ると立体的で、一味も二味も違う。高級感あり

 「印刷技術が進化する一方で、古いままで魅力あるプロダクトが完成していくのも、楽しいところです。手動というところが、わかりやすい特徴でもあります。圧というか、押し込みを自分で変える場所があるんですよ。そこを調整したり、力の加え方を変えたりする。紙を一枚ずつ自動で受ける皿に持っていくので、一応『自動』なんですが、基本的には、体を使って印刷するフィジカルな作業です」。別の業者に作ってもらった版は、1枚のプレート状になっていて、それを印刷機にはめ込んで刷っていく。ここで、コーヒーやチャイなどを作って供している。スパイスなどは、すり鉢で砕く。何もかも手作業で行うため活版印刷と通じるものがある?

 活版は古い印刷技法だが、現代において、新しい印刷物の価値観が生まれてきている。「活版印刷機という一つの機械で、さまざまなことができるところも面白いところです。少なくとも、今の印刷機では、絶対にできないと思っています」。活版は、まだまだ可能性を秘めていると佐藤さんがうなずく。「色を印刷過程で変化をつけられるのもその一つです。紙をくり抜いてインクを乗せたり、凹凸を使って、立体感を出すこともできます」。可能性は無限に広がっていく。名刺にしても、膨らみをつけて触って初めてわかる面白さが理解できるのだ。カフェスペースには、活字が小さな箱に入れられ飾りとして置かれている

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