三角窓 重ステ 手動ウインドー…FUN TO DRIVE

コラム其ノ拾弐(特別編)

retroism〜article〜206〜

  モータージャーナリストの三本和彦氏(2022年7月逝去)がテレビで言っていた言葉をよく覚えている。「これね。いつもお願いしているんだけど、三角窓をつけてくれると、いいんですがねぇ」

 確かに、少し開けるだけで、冬は暑くなりすぎた車内に新鮮な空気が入ってきて気持ちがいい。夏は全開にすれば、外の新鮮な空気を車内に送り込み、暑さを和らげてくれる。また、降雨時には曇りが取れる効果もあった。三角窓は、本当に見られなくなった。全ての車にクーラー(エアコン)が装備されたからか? それでも三本氏の言うとおり、いい装備だと思えるのだが

 TVK(テレビ神奈川)で司会を務めていた「新車情報」は、三本氏の代表作だった。番組では女性アシスタント、ゲストとして開発責任者(エンジニアやデザイナーなど)を招き、3人で進行していた。決まり文句は「不躾(ぶしつけ)なままやってます。よろしくお願いします」だった。特に通称「不躾棒」と呼ばれる棒で車のトランクなどを採寸し解説する姿は本当に不躾だった。

 新車が出た時に取り上げて解説が行われる同番組だが、車のモデルチェンジが盛んに行われ、近未来的なデザインに変わる頃の話だ。銀色バンパーの話にも頻繁に触れていた。ひところから、バンパーが車体と一体になったのが彼は相当不満だったらしい。「どこかに当てちゃった時に、バンパーだけ変えれば済むのに、一体型にしてしまうと、前の部分を全部取り替えなくてはいけない。それは不経済だ」と。彼は、実用性を重視した評論家だったのである。確かにいつの頃からか三角窓、銀色のバンパーもなくなった。今考えても、三本氏の主張は理にかなっていた。