10円ゲームが紡ぐ縁や運命、ドラマに一喜一憂

駄菓子屋ゲーム博物館

retroism〜article143〜

   10円ゲーム。かつての懐かしい記憶を呼び起こさせてくれる一方で、今も激しく心躍らせる存在だ。そもそも、「10円で何かできる(買える)」ものなど、この世にほとんど存在していないのだから。

「知ってる人は店に入るなり「あっ! 新幹線ゲームだ! ガンダムだ!」と喜んで叫ぶらしい。右端がガンダム左端が新幹線ゲーム

 そんな10円ゲームを集めて、実際に遊ぶことができる東京・板橋区の「駄菓子屋ゲーム博物館」の館長・岸昭仁さんが、穏やかな口調で話し始めた。「物心ついた時には、駄菓子屋に通っていました」。昭和の子供としては珍しいことではない。駄菓子屋は、もらった小遣いを使って遊べ数少ない子供たちの社交場だった。しかし、岸さんの場合は、微妙に違っていた。「一般的には、ショッピングを楽しむのがメインでしたが、私は、それよりもゲームが目的でした。例えば、100円あったら、ほかの子たちは、半分お菓子で残りはゲーム。私はゲームに70円で、駄菓子に使うのは30円ぐらいの割合です。菓子は、ゲームで勝てば、もらえますからね」

子供は夢中、お母さんは真剣なまなざし。
ゲーム機の前で親子の絆が生まれそうだ 

 年齢が上がるごとに、岸さんの意識は、ゲームへと傾いていった。高学年になると、ゲーム機を所有したい気持ちが頭をもたげる。夏休みの宿題で、自分で板にくぎを打ちつけパチンコのようなものを作ったこともある。元々モノ作りが好きだったし、手先も器用だった。「手元にあれば、いつでも遊べますからね」

 その日は、ついにやってくる。近くの米屋の軒先に、「FOOTBALL」というゲームが置いてあったのを見つけたのだ。「もう使ってなさそうだし、もらえそうな気がしたんです。倒されていたので、捨てられてしまう寸前だと感じました」

「FOOTBALL」は、岸さんが最初に手に入れた
一台。米屋の店先にあったものを譲り受けた

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