10円ゲームが紡ぐ縁や運命、ドラマに一喜一憂

 博物館ができたのは、2009(平成21)年のことだった。「来館するのは、私と同世代の人たちと思っていましたが、若い世代は、遊んだ思い出はないし、彼ら彼女らにとってゲームとして魅力があるのか、面白がってくれるかと不安もありました」。しかし、それは杞憂(きゆう)に終わる。「40、50代や20代の2人組、デートらしき若いカップルの姿もあります。親子で遊びにきてくれて、お父さんが懐かしがりながら、「子供の頃に遊んでいたんだよ」というコミュニケーションも生まれています。世代を超えて夢中になるのを見ていると、私としても、頑張って集めたかいがあるしうれしくなりますよ」

若いカップル、小さな子供を連れたお母さん、家族連れ、実にさまざまな組み合わせで来店するのが面白い

 取材中に10円玉を弾くパコーンという音や、ガチャガチャとパチンコの球が機械の中を動く音が聞こえる。ハズレに落ちてしまうと「あー、ハズレたー」と本当に残念そうな声が聞こえ、成功した家族は、皆で喜ぶ。「当たったー!」と一番大きな声で叫んでいたのは、父親だった。

 姿を消していく10円ゲームの収集の意味を、岸さんは、「一期一会」という言葉で表した。「閉めた駄菓子屋さんから、ゲームを引き取らせてもらって、翌年行ったら、建物ごとなくなっていたなんてこともあります。私が訪ねていくのが、少し遅かったら、そのゲームはこの世に存在しないんです」

店先のガチャガチャには、なぜか西日がよく似合う。駄菓子屋では外せないアイテムだ

 シンプルかつ素朴なゲームが、人の縁とか運命とかを紡いでいく。今の時代に困難と思われる尊い役割が潜んでいたのだ。

だがしやげーむはくぶつかん
東京都板橋区宮本町17–8
営業時間:午後2〜7時(平日)、午前10〜午後7時(土日祝日)
定休日:火、水曜(祝日の場合は営業)
入場料:200円(1歳以上、メダル10枚付き、当日に限り再入場可能)
https://dgm.hmc6.net/
文・今村博幸 撮影・JUN

           

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