10円ゲームが紡ぐ縁や運命、ドラマに一喜一憂

 「小学生の頃から好きでしたが、10円ゲームに対する思いは今の方が強いかもしれません」。それは、機械式の遊具がとことんアナログであり、練習すればどんどん上手になっていく面白さがあるからだ。「テレビゲームなどのいわゆる電気仕掛けで動くゲームは、同じ力で押せば、同じ現象が起こります。でも、アナログゲームは違います。季節や温度でコインの動きやスピードが微妙に変わるんです」。同じ力で弾いても結果が同じにならない。コインのさび具合や汚れ方でも違ってくるという。「遊び道具として、幅というか深みとが感じられるんです」

スロットに入れた10円玉を、左右のレバーで力を加減しながら打っていく。スリルの波状攻撃だ

 遊び始めて回数を重ねると上達するから、さらに練習を繰り返すことになる。練習をすれば、テレビゲームでも上達はしますが、季節や温度、機械のコンディションなどで結果に関わってくるなどということはありませんからね」。まるで、生き物のように、プレーヤーに立ち向かってくるのが10円ゲームなのである。「機械仕掛け」でしか味わうことのできない魔法のような面白さに加えて、成功すれば、金では買えない賞品がもらえる。そんな機械を保存し、残していくのが、自分の仕事だと岸さんは言った。「いまだに、コツコツと修理している職人さんが全国にいます。残っている10円ゲームの裏に彼らのような人たちの存在があることも思い出してほしいと心の底から願います」

博物館オリジナルステッカー。来館記念にぜひ一枚

 一息入れて岸さんがしみじみと言った。「私も自分で修理するし、大切にしていると思っていたけれど、彼らに会うとそれ以上だということがよくわかるんですよ」。職人たち一人ひとりの顔や仕事ぶりに思いをはせるように顔をこちらに向けた。「行き場のなくなった10円ゲームを一台でも多く残さなくてはという使命感もありますね」。真っ直ぐな視線で岸さんは言い放った。

豊富な知識や持ってる機械の種類や数など岸さ
んは、10円ゲームに関する第一人者と言える 

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