柴又ハイカラ横丁(東京・柴又)
retroism〜article20〜
石川ひとみの「まちぶせ」が店内に流れている。懐かしい曲だ。視線の先には、ヨーグルやよっちゃんイカ、ミルメークなど懐かしい駄菓子が店頭に並ぶ。
かつて若者を夢中にさせたピンボー
ル。コンピュータ ーゲームでは絶対
に味わえない生々しい興奮が蘇る
「もともと、テーマパークとか、古い建物が好きでした。心の中で、いつかは自分でもそんな空間を作りたいという夢を温めていたんです」。柴又ハイカラ横丁の店主・韓永作さんが、店を開いた理由を語る。「懐かしい雰囲気を感じてもらう店にしたいと思っています。大切にしたいのは、空気感です」
腕を伸ばして、銃口を的に近づけるのが打ち方のコツ。1回300円。もう一つコツがあるが、それはスタッフに尋ねると優しく教えてくれる
最近は、昭和のグッズや駄菓子などを売る店も少しではあるが増えてきた。しかし、柴又ハイカラ横丁と他のと違いは、ピンボールと射的コーナーがあるところだろう。ピンボールは、ひと頃、若者たちを確実に興奮させたゲームだ。銀のボールをプランジャー(ボールをプレイフィールドに打ち出すための先端にゴムのついた金属の棒)で弾く。スタンダップ(ボールを当てると反応する的)とドロップ(ボールを当てると下に落ちる的)両ターゲットにボールが当たるたびに、ティルト(台を揺らし過ぎて起こるゲームオーバー)にならない程度に台をゆすりながら、得点を稼いでいく。最後の砦(とりで)がフリッパー(銀のボールを弾く左右についたバー)だ。目の前に落ちてきたボールを操り、さらなる得点を獲得していく。単純だが、他では得難いスリルを味わえるゲームだった。そして、バックグラス(台の正面後ろに設置されたボード)に描かれた派手な色彩の古いアメリカの風俗や、SF的、または宇宙的な絵などは、まだ見ぬものへの憧れを形にしてくれた気がした。
作り込まれた2階にある、おもちゃ屋さんの再現したコーナー。ファンが泣いて喜ぶおもちゃでいっぱいだ