おせちに込められた意味をかみしめ 正月を味わう

コラム其ノ弐拾(特別編)

retroism〜article183〜

 お正月の定番料理といえば「おせち」だ。

 大みそかの夜から元旦にかけて、こたつや大きなちゃぶ台でおせちを囲み親戚一同が集まり、食べて飲むのが昔ながらの正月の過ごし方だった。しかし、そんな風景も、核家族化の中でずいぶん様変わりした。同時に、おせちの有り様(よう)からその意味合いまで、昭和の時代とは異なってきた。

 重箱に盛り付けられるそれぞれの料理には、意味があった。数の子は子孫繁栄を、田作り(ごまめ)は豊年豊作、五穀豊穣、昆布巻きは、語呂合わせで「養老昆布(よろこぶ)」、出世魚であるブリを使うのは、その名の通り立身出世できるようにとの願いが込められている。全てがめでたい事柄と絡めてあった。正月がめでたいのは、もともと「数え年」で年齢を数えていたため、1月1日は、みんなが一斉に年をとる祝いだった。健康に一つ年をとったことを、みんなが集まって互いに喜び合い、1年を幸せに暮らすことを願うための新年の祈りでもあったのだ。おせちを食べないと正月を迎えた気分になれない人も多いだろう。ただし、何日も食べるのは、拷問に近いかもしれない

 かつては祖母や母親が中心になり、時には親戚も泊まりがけで集まり数日がかりで手作りすることで、それぞれの料理の意味は深くなっていった。昭和と比べて最も変わったのは、おせちは作らず、買うようになったことではないだろうか。年末が近づくとデパートやスーパーマーケット、あるいはネットでおせちのセットが売り出され、家庭で作られることは少なくなった。

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