チャルメラ 石焼き芋 切符鋏 耳で感じる昭和風情

コラム其ノ拾漆(特別編)

retroism〜article167〜

 毎日聞いていた駅の改札の音がすっかり様変わりしたのはいつのことだろう。今は、自動改札機の電子音が、「ピッ」と鳴るだけ。新幹線も自動改札になり切符を入れると「カシャッ」と音がするだけになった。50年前はもちろん自動改札などではなかった。改札ボックスの中に切符を切る係の駅員がいて、改札鋏(ばさみ)を「カチカチ、カチカチ」とリズミカルに鳴らしながら切符を切っていく。その音が幾重にも重なって、駅独特の音になっていた。人によってリズムが違い面白かったが、ほぼ全国的に消えてしまった。そんなふうに、かつて、繁華街や住宅街には、いろいろな「音」があふれていた。

風鈴の音色を聞くとなぜか涼しげな気分になる

 草木が芽吹き動物たちの活動も活発になるのが春だ。かつての住宅街では、野良猫たちは発情期を迎え、赤子の泣くような声で盛んに愛を育んだ。都会では滅多に聞かなくなったが、ウグイスの鳴き声も聞こえた。「ホーホケキョ」

 夏の都会ではセミの声もめっぽう少なくなった気がする。暑い日差しの中歩いている時、「ミーン、ミーン」と鳴かれると、なぜか気温が数度上がったような気になった。それを打ち消してくれるのが、住宅街の細い道に入ると聞こえてくる風鈴の音だ。ガラスまたは金属同士が当たる爽(さわ)やかな音色が涼を運んでくれた。夏休みには、スイカ割りなども行われ、「パンッ」という小気味良い音もあちらこちらで聞こえた。