カセットテープで昭和音楽を聴き 喜びを分け合う

「60年代から80年代ぐらいにかけて、僕たちはほぼタイムリーでカセットテープと『一緒に過ごしてきた』という一体感があります。だから実体験として、語れる部分もたくさんあるんですよね」。今では、売ってる店もほとんど見ない。「この形のバーは、もしかしたら、日本初かもしれませんね」とキヨトさんは、目を輝かせる。「ショップだと、物を買っていただいたら基本的にはそこで終わってしまいます。でもバーなら、カウンターで会話ができるし、それが広がって、コミュニティーになっていく可能性も十分にあります」引き出し式のカセットテープ入れ。多くの人が使っていたわりとポピュラーなこの棚も懐かしい

 もちろん全てが薔薇(ばら)色ではなかった。カセットテープにも、欠点はいくつかあった。例えば、A面を聴き終わったら、「ガッチャン」とストップボタンを押して、ひっくり返さなくてはならない。ここはレコードと同じだったが、すぐにオートリバース機能などが採用され、その手間は省けるようになった。しかし、何かの拍子にA面を最初から聴きたい時には、巻き戻さなくてはならない。カセットをポケットに落として、手でパタンと閉めればセット完了。手動がたまらなくいい

「巻き戻しの時に、デッキの前で待っているんですよ。逆にそこの間が面白いというのもあるんですが、初めて見た人は、『この人なんで黙って立ってるんだろう』という目で見るお客さんもいますね」

 1曲か2曲、先か前の曲を聴きたい時には、プレイボタンを押したままで、巻き戻しや早送りのスイッチを押す。すると、「キュルキュル」という音がきこえてしまう。これも若い人たちにとっては、不思議な音に聞こえるらしい。洋酒を中心に揃えてあるロックで飲んだり、水やソーダ、トニックなどで割るのもよし