ディスクユニオン昭和歌謡館(東京・新宿)
retroism〜article3〜
ゾクゾクするほどインパクトのある店名だ。しかもド直球かつ扇情的。その名も「ディスクユニオン昭和歌謡館」。よくぞ付けたものである。
ディスクユニオンが長い間、あらゆるジャンルのレコードやCDを扱ってきたことは、誰もが知るところであり、認めるところでもある。その膨大な蓄積の中から、昭和に発売された音源を抜き出して棚に並べた。充実しないわけがない。扱うのは、昭和にリリースされた日本の音楽全般。切り口は、ジャンルではなく時間軸だ。演歌やアニソンも扱い、美空ひばりにチャー、岡林信康もいれば、中森明菜がジャケットの中で微笑(ほほえ)んでいる。年齢が上の人たちにとっては思い出を、若い人たちには過去の優れた音楽を、いいとこ取りでそろえた上で、店のスタンスはこうだ。「その中から好みのものを見つけてください」
7インチレコードのジャケットを壁一面にディスプレイしたのは、ジャケットがレコードの欠かせない魅力の一つだとの考えからだ
オープン当時の音楽シーンを含めた社会の状況は、あらゆるものが交錯していたと、店長の杉本博士さんは言う。「オープンしたのは5年前ですが、その数年前から、昭和の歌謡曲に注目が集まっているという話が、社内で持ち上がります。根拠はありました。DJイベントやヒップポップのアーティストたちが、いわゆる歌謡曲を自分のパフォーマンスの中に違和感なく組み込み始めたんです」。クラブミュージックを聴くような若い世代の人たちが歌謡曲を受け入れるなら、40代、50代さらに上の年代の人たちも、当然、聴きたいのではないか。ならばそこに特化した店の需要もあるはずだ。新店舗立ち上げは、水面下で準備が進められていた。
店内へ下りていく階段の壁には、歌謡曲
好きが泣いて喜ぶ ジャケットの写真が出
迎える。気分は嫌が応にも盛り上がる