カセットテープで昭和音楽を聴き 喜びを分け合う

 客は酒がおいしくなる音楽、心地よくなれる音楽を求めて、代々木近辺の店にやってくる。「そういうのを見ている中で、自分で店を始めたら面白いのでは? というのが一つありました。それと、もう一つは最近人気が再燃しているレコードという存在がある中で、カセットテープをBGMに使う店はほとんどないことに気がついたんです」キヨトマモルさんが自作のアンプ(右上)、その下は昭和の名機ソニーのTC−K555ESR

 50代のキヨトさんは、若い時にカセットテープの一大ブームを経験している世代。カセットテープが世間に大量に出回り、多くの音楽ファンがそれを楽しんでいた時代でもある。ソニーがが79(同54)年に発売した「WALKMAN」は、カセットテープの盛り上がりに追い打ちをかけた。WALKMANをバッグに忍ばせ、ヘッドホンを耳に当ててスケートボートに乗る(または街をかっ歩する)という、若者のライフスタイルを劇的に変え、新しいカルチャーが生まれた。「僕らが味わった楽しさを残していければと思ったんです。そのためには、聴かせるお店が必要です。お酒を飲みながらカセットテープから流れる音楽をBGMにするバーがあったらなと思い始めました」

さまざまなジャンルのカセットテープが
バーのカウンターに雑然と置かれていた

 同時に、カセットテープには、レコードにない良さがある。レコードをレンタルしてそれをテープに録音し、自分のラジカセで聴いたり、車にもデッキが積まれるようになって、ドライブしながら音楽が聴けるようになった。もちろんレコードではちょっと無理な話だ。さらに、FM放送の音楽番組をラジカセでエアチェックするのも多くの若者にとっての遊びの一つでもあった。もう一つ、カセットテープは、レコードから好きな曲を選んで、オリジナルの一本を作ることができた。特に、車でデートする時には、彼女の好きな曲を集めて一本作って持参すれば、ムードはいやが応にも盛り上がることになる。ただし、選曲を間違えると、気まずくなってしまうこともあったので、注意が必要だった。透明な青が店のテーマカラーらしい。さわやかな気分も味わえる