カセットテープで昭和音楽を聴き 喜びを分け合う

「人によっては、その音で喜ぶ人もいますけどね」とキヨトさんは苦笑した。ただ、これぞカセットテープならではの音であり、おじさん世代には懐かしい音でしかなく、うれしくなってしまう。よりアナログを感じてしまうからだ。「正直にいうと、カセットの音は、いわゆる特別いい音ではありません。言ってみれば、チープな音だけど許せるんです。でも楽しむことができるなら、どんな媒体でも楽しめると思うんです」。逆に、いい音を求めてオーディオを使い、眉間(みけん)にシワを寄せながら聴くよりも、楽しめばいいという気楽さは何ものにも代え難い時間だ。

(上)カセットテープをプリントした小物やトートバックなどのグッズも充実している(下)カセットテープモチーフのキーホルダーも可愛い

 かける音楽は千差万別。ロック、ポップス、ソウル、ジャズ、レゲエ、歌謡曲などジャンルにこだわらない。島倉千代子など演歌が流れることも。「音の良し悪しよりも、アーティストがメインになれる機材なんではないかとすら僕は思っているんです」。店でかかっていたカセットテープの音は、すっきりした感じがした。もっとカジュアルに、軽やかに音楽を楽しみながら酒を飲みたい向きには、カセットバーというユニークな存在は、とても居心地のいい場所となっていくだろう。

小田急相模原駅から徒歩3分。青い光が目印
だ。店内はバーにしては明るくてカジュアルだ

「音楽って、みんなで聴く方が絶対に楽しいと僕は思っています。同じ音を聞きながら、話をする時間の密度は濃いんです。その辺りを、今の若い人たちにも知ってほしいと思っています。そのために何ができるのか、ある意味実験的要素もある店なんです」

 カセットテープは、みんなで昭和の音楽の喜びを分かち合える、いまだに優れた音源なのだ。

ばー ら かせっと
神奈川県座間市相模が丘5-1-25
📞:042−705-6760
営業時間:午後7時〜0時(L.O午後11時)
定休日:日、月、火

文・今村博幸 撮影・JUN