古き良き風習「餅つき」「鏡餅作り」を懐かしむ

 つくのは伯父といとこが受け持った。まず、杵を小刻みに動かして米をこねていく。ある程度粘り気が出てきたらそこからが本番だ。男2人がかりで杵を順番に振りかざした。途中で、小さな桶(おけ)に入った水を手につけて、祖母は米の位置を変えた。テレビなどでよく見かける掛け声はなかったように記憶している。地方によるのかわからないが、それぞれの家のやり方だろう。次第に小さな粒から大きな塊へと形を変えて餅らしくなっていった。

 できあがりをどこで判断していたのかはわからなかったが、勘と見た目だと思う。どちらからともなく手を止める。手にくっつかないように、いとこが手を水でぬらして、完成した餅を大きなベニヤ板に乗せる。

 ここからがまた一仕事になる。女性たち(祖母、伯母、里帰りしていた親戚)が集まってきて、冷めないうちに、手を上手に使って丸め始める。親指と人差し指を使って、一口大にちぎり両掌(りょうてのひら)でくるくると丸め潰して、平らな丸餅を作る。お供え用に残しておいた餅は大きさを変えて形を整えていく。年神様を迎えるために、四方紅(赤で縁取りされた紅白の紙)、ウラジロ(シダ葉)、紅白の御幣(赤と白の四角形が重なった帯状の紙)、昆布やヤブコウジ(赤い実のなる植物)、てっぺんには橙(ダイダイ)を乗せ、一番目立つ場所に飾って、これから始まる1年の幸運を神に託す。鏡餅の完成である。

鏡餅は年が明けると訪れる「年神様」を迎えるためにお供えし、家族の健康など新年への願いを込めるという意味がある

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