古さと新しさが融合 社交場でハレの日に思い出を

 それは、これから発展していく日本経済の原点でもあった。時代を経るごとに、少しずつ形は変わって来たものの、随所に往時をしのばせる貴重な品々が残っている。「初代、2代目と続いて東京會舘が、伝統と格式のある建物だと一目で分かっていただくために、車寄せの上部に備えられた細かい模様のファサード(建物正面部のデザイン)ですとか、特別な場所としての存在感を感じさせるような工夫をしています」

 エントランスを入り、すぐ右側には、あまり見たことのない大理石が壁一面を覆う。「コレニア大理石と呼ばれています。約6億年前の藻の化石が渦巻き模様になっています」。初代ではロビーの柱の建材として使われていた。2代目では、11階と12階のエレベーターの横の壁の大部分を占めていた。「現在では大変珍しく貴重な大理石と言われています」。建築好きな人が、遠方から見にくることもあるという。


(上)(下)藻の化石が固まったコレニア大理石。遠くから見る
と幻想的な景色。近づいて見ると藻が幾重にも重なって美しい

 正面玄関から見えるエレベーターの先にある壁には、2代目建物にあった、約9万ピースのモザイクを使った「都市・窓」(洋画家・猪熊弦一郎作)という壁画作品が飾ってある。その前の廊下を照らすのは、レプリカではあるが、円形をしたモダンなシャンデリア「金環」(同)だ。花の模様もそのまま再現してある。「建て替えて新しくなりましたが、『また戻って来たんだね』『東京會舘は変わらないんだな』と思っていただけるような懐かしさを残しています」2代目からあるモザイク壁画「都市・窓」と円形のシャンデリア「金環」。訪れる人にとっては、この風景を見ると帰って来た気分になるという

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