消えゆくレトロ建築の記憶よ永遠なれ

コラム其ノ拾伍(特別編)

retroism〜article130〜

 常日頃から​​レトロなモノ、味、空間、風景などを求めての街散策を趣味としている。特に昭和のレトロな近代建築に邂逅(かいこう)したときは、思わず足を止めてしまうことしばしば。

 東京・高田馬場にある古き良き下宿「武井 日本館」が2020年3〜5月に取り壊された。武井 日本館は1936(昭和11)年に建てられた。今となっては希少な賄い付きの男子学生専用の下宿だった。トイレは共同で風呂はない。床の間、押入れ付きの四畳半の部屋が24室あり、家賃は5万5000〜5万7000円(夕食付き)だった。ここに居を構えたことがあるわけではないが、聞くところによると、女将(おかみ)さんが学生らに優しく接してくれ、家庭的な雰囲気を醸し出していたという。特に中庭の池に泳ぐ鯉(こい)が、住民の心を癒してくれたというエピソードも。マンガ「海月姫」(東村アキコ作)に登場する「天水館」のモデルにもなった由緒正しきレトロ建築だ。外観も洋館風で、当時としては瀟洒(しょうしゃ)でモダンな建物だったことは想像に難くない。前を通るたびに、「いつかレトロイズムで紹介しよう」と心に決めていただけに残念の一言だ。

今でも高田馬場、早稲田かいわいには賄い付きの下宿が僅かながら残っている

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

error: Content is protected !!