消えゆくレトロ建築の記憶よ永遠なれ

 もう一つ、東京・銀座の「中銀カプセルタワービル(以下、中銀カプセル)」についても触れたい。中銀カプセルは、黒川紀章が手がけたメタボリズム(社会や人々の暮らし、働き方に沿って有機的に成長する都市や建築)を代表する作品の一つだ。竣工は72(昭和47)年。室内は10平方㍍ながら、ユニット式のバス・トイレに加え、カラーテレビやラジオ、ステレオ、オープンリール式のテープレコーダーも備わっていた。1戸の重さは約4㌧、計140戸の「カプセル」で構成され、その形状から「宇宙船」とも呼ばれていた。後にアニメ版「AKIRA」「攻殻機動隊」などに影響を与えたと言われる映画「ブレードランナー」の荒廃した近未来都市をほうふつとさせる。しかも、中銀カプセルができたのはブレードランナー公開の10年前というから驚きだ。悲しいかな、ここも2022年以降(時期は未定)の取り壊しが決まっている。一方で、「中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト」が結成され、カプセルを取り外し、美術館への寄贈、宿泊施設での活用などを目指す動きもある。また、カプセル改修のための費用をクラウドファンディングで募っているという。中銀カプセルについては、解体前にどうしても写真に収めておきたかった。そんな思いから、当サイトの「レトロ建築探訪其ノ弐」で斬新なたたずまいを紹介することができたのは幸甚の至りである。

メダボリズムを代表する中銀カプセルタワービル。コル
ビュジエのロンシャン礼拝堂を思わせる、縦横の正長方
    形の窓がついた部屋。いつ誰がつけたかは不明=JUN撮影

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