古さと新しさが融合 社交場でハレの日に思い出を

 実は、初代の東京會舘は隣の帝国劇場と地下で繋がっていたことはあまり知られていない。これにも逸話があり、ロンドンにあるサヴォイホテルとサヴォイ劇場が地下通路で繋がっているのを視察した帝国劇場の支配人で、東京會舘設立の発起人の一人でもある山本久三郎が、日本にもこんなものがあったらいいと提案した。「芸術と繋がって、余韻を楽しみながら食事をし、豊かな時間を過ごしてもらえると思ったらしいのです」

(上)チャペルには新しい門出を神聖な気持ちで祝ってくれる空気で満ちあふれている。正面奥の窓からは、皇居が見える(下)内部の壁には1面に花崗岩の石がびっしり。一つだけハートの形をしたものがある。探してみてほしい

 クラシックモダンを標榜(ひょうぼう)する3代目東京會舘(新本舘)が、柔軟な考えを持ちながら運営がなされていることは、南條さんの話からもよくわかる。「全てモダンにしてしまうわけではなく、古さと新しさを融合させて、今までのお客様にも戻って来てほしい。3世代続いて東京會舘になじみがある方もたくさんいらっしゃいます。古いものを残しながら、一方で少しだけ流行を追うなど新しいものも取り入れていく。かつて、エントランスは、1カ所しかなく『敷居が高そうな』イメージがあったと言われていた。今は商業ビルや地下鉄ともつながり、誰もが自由に出入りできる。ファサードの上の方に、日本語のロゴが取り付けてある。建物の前に立ったら、見上げてほしい

 舘内を見ると気づくのは、大理石がふんだんに使われているところである。「叙勲のお祝いや結婚式などハレの日にお使いいただいて、人生の一ページとして目に焼き付けていただきたいのです。『あれを過ごしたのは東京會舘だったな』とずっと思い出に残していただける場所でありたいと願っております。そのために、一生に一度の時間を楽しめるように高級感は保つようにしています。上質なサービス、おいしい料理と共にいつでもお迎えいたします」

 南條さんは、自信に満ちた表情でほほ笑んだ。

とうきょうかいかん ほんかん
東京都千代田区丸の内3-2-1
📞:03-3215-2111

営業時間:午前10時〜午後10時
https://www.kaikan.co.jp/

文・今村博幸 撮影・JUN


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