レトロ自販機が107台「シュポ」と栓抜き体験も

 それが齊藤さんの記憶にクッキリと残っていたのである。縁あって自販機を入手したものの、長らく倉庫にしまっていたが、試しに店の表に出してみた。「みなさん、懐かしさや珍らしさもあって、とても喜んでくれたんです」。そこから、昭和に製造された自動販売機の収集が始まる。現在所有する107台が整然と並ぶ様に圧倒される。

「一番好きなのはハンバーガーですね。2番目は天ぷらうどんです。これからの季節はかき氷も人気です」和(なご)やかな表情で話す齊藤社長

 確かに、コカ・コーラの自販機のデザインは格好良かった。「自分で商品(瓶)を引き抜くなんて、当時ありえないじゃないですか。その辺りが魅力でしたね」。齊藤さんは、懐かしそうに目を細める。昭和の時代に自販機は、至る所にあった記憶がある。駄菓子屋の入り口周辺や、道端でも時々見かけた。細長いドアを引っ張ると、瓶の王冠が縦にズラッと並んでいた。下の方にはファンタもあった。子供にとっては、引き抜くのにも少し力が必要だった。その横のくぼんだ場所にある栓抜きは、鉄でできていて、瓶を下に傾けると、「シュポ」と言う音とともに王冠が外れるのが、たまらなく気持ち良かった。ダイヤルを回して商品を選ぶ方式。いかにもアナログ的で、買わなくてもついつい回したくなる

 筆者が小学校高学年の頃、東京・品川駅の前にあった、品川プリンスホテルの室内スケート場に頻繁に遊びに行った。親戚の伯父が西武鉄道に勤めていて、招待券をもらえたからだ。友達を誘って、アイススケートを楽しんだ。その道端にハンバーガーの自販機があり、行き帰りによく食べた。お金を入れ、好きなバーガーのボタンを押すと、温める間にデジタル表示の数字がカウントダウンされる。やがてが、「ボコッ」という音を立ててホカホカの四角くて黄色い箱が落ちてくる。アメリカの味との最初の遭遇だった。当時の値段は忘れたが、100円ぐらいじゃなかったかと思う。子供の小遣いでも買える値段だった。


(上)食品、飲料自販機に混ざって置かれたおみくじ販売機(下)引いたおみくじは天井のひもにビッシリとくくりつけられ、それぞれが幸あらんことを祈願する 

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