60〜80年代のレコード1万枚 音楽で繋がる場に

 当時は、「レコードで聴くための音楽」を作っていたと吉岡さんはうなずく。だから、デジタルで聴いてはいけないんです」と言い切る。「彼らが作りたかった音楽は『レコードで聴くための音楽』。デジタルでは、彼らが作った音は聴けません」。レコードとシンクロした音作りをしていたので、やはりその年代の音楽がしっくりくる。

ターンテーブルにレコードを載せる吉岡さん。カウンターの裏がブースになっている

 令和の時代に若者にも聴いてもらい、レコードがもう一度盛り上がる。そんな光景を想像しただけでワクワクする。「アナログはこれからも残るし残さなくちゃいけない。ここ数年は、ブームになりましたけど、その前は、価値があまりなかったから、ごみになっちゃうんですよ。もったいないですよね。好きなレコードは取っておくけど、それらをちゃんとした形で、できるだけ多くのレコードを集めて、引き継いでいきたいというのが夢なんです。ゆくゆくはレコード資料館・博物館的なものを造りたいと思っています」と吉岡さんは野望を語る。レコード盤自体はほぼ劣化しないが、盤面が汚れていたり、カビが生えることもある。ジャケットが破損しているものも少なくない。時間はかかるが、盤面を洗浄(クリーニング)してジャケットを確認し修復する。そういう地道な作業を繰り返し残していくことに意味があるのだ。

音が刻まれた1本1本の溝が、スタイラスイルミネーター
(麦球)の光に照らされ美しく浮かび上がる

 だからこそ、今きちんとレコードを聴ける場所を作りたいと考えた。さらに、そんな面白さを語れる人がだんだん減ってきていることも吉岡さんは憂いている。「当時の音楽業界を知っている人、邦楽で言えば、山下達郎が面白かった時代を語れる人が50代や60代、またはそれ以上の年代になっちゃったんです」。その頃の音楽事情などを熟知している人たちの生の話を聞ける空間を提供したかったという吉岡さん。「だからレコードを聴き、話をするイベントも頻繁に開いています。そこに若い人も来ていただけたらというのが私の希望です」

かけているレコードジャケットをセットする。イーグルス、
 CSN&Y(クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング)、
ジャクソン・ブラウンが並んだ。アメリカンロックの強者たちだ