寝台列車 パンチの音 熱地獄の夏…蘇る昭和の記憶

コラム其ノ弐拾壱(特別編)

retroism〜article193〜

 青い車両に真っ白な制服が格好良かった。そんなブルートレインの車掌に憧れた。両親の実家が共に佐賀県だったので、小学生の頃は夏休みになると、家族で泊まりに行った。新幹線は新大阪(1972年に岡山、75年に博多まで延伸)までの時代、子供にとって夜汽車の旅は楽しい記憶しかなかった。線路の継ぎ目を通るたび「ガタンゴトン」というリズミカルな音と適度な揺れが硬い寝台車のベットにもかかわらず、スッと眠りへと誘ってくれた。

 夕食は食堂車で味わった。ハンバーグ定食が多かったように記憶している。大人だったら、過ぎてゆく夜景を楽しみながら、ビールでも飲みならが食事を楽しむのだろうが、子供にとっては、景色より料理に集中してしまう。ご飯が皿に盛られていたのは、デパートのレストランと同じだったが、揺れる列車の中で、バランスをとりながら運ばれてくる料理やご飯は、それとは違って見えた。電車内で食事をする非日常は子供にとっても特別な体験だったのである。2段式のB寝台。3段式と比べて1段目、2段目ともゆったりとスペースが確保されていた。カーテンで仕切るだけの簡素な構造はおおらなか時代を思わせる