懐かしさと真心いっぱい 昭和のかき氷で暑気払い

 何かあったら、おじちゃんのところに行けばなんとかなる。駒沢公園で遊ぶ子供はもちろん、大人もそう思っていた。慕われていただけでなく、頼りにもされていた。昭和には、そんなおじちゃんやおばちゃんが必ず近くにいたが、今では絶滅危惧種と化してしまった感がある。しかし、ふた昔前までは当たり前のようにいたのだ。

いつ作られたか分からない扇風機。ちなみに、店内には冷房はない

 一方では、アイデアマンでもあった。「例えば、かち割り氷を売り出した時に名前をなんにしようかって話になったのね。苗字が石橋だから『ストーンアイス』にしようとかね」。面白い人だったと、面影を追うように古いかき氷機を見上げる。手先も器用だった。「氷彫刻もやっていたのよ。電通のイベントや博報堂の仕事なども請け負っていた。でも、そんな商売を楽しんでいたと思いますよ」。食べ物は人間が作るものである。おじちゃんの技術や味付けに加えて、人柄や真心が凝縮させている「石ばしのかき氷」。おいしいに決まっている。

今は物入れになっているが、氷を使って食料
を冷やす昔の貯蔵庫もいまだに残っている 

 残念ながら、14年前におじちゃんは他界したが、今では、おばちゃんによって受け継がれている。「うちの特徴は、インスタ映えしない昔ながらのかき氷ですよ」。よく言えば、実質本位とも言える。イチゴやメロン、レモンなど定番の味があるが、その上にフルーツを乗せたりしない。氷とシロップだけだ。中には、おばちゃんが一工夫した味もちらほら。例えば、石ばしでは、冬になるとホカホカの安納芋が人気だが、それを氷に合うように手を加えてある。見た目は無骨だが、芋の香りと甘さがやさしい。紅茶ミルクというヒット商品も生み出した。「私自身がアイスミルクティーが大好きで、これをかき氷にできないかと思って作ってみました」。友達は、「そんなの売れるの?」と半信半疑だったが、今では、女性客の人気ナンバーワンだ。

呼び鈴の音も涼しげ。大きな声で呼ぶ必要はない

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