懐かしさと真心いっぱい 昭和のかき氷で暑気払い

氷 石ばし(東京・三軒茶屋)

retroism〜article161〜

 かつて、ダイハツ・ミゼットで、東京・駒沢公園にやってくるかき氷屋がいた。

 車の主は、石橋信太郎さん(以下おじちゃん)。東京・三軒茶屋にある「氷 石ばし」の主人だったその人である。もともとは氷の問屋を始め、後にかき氷も商った。

安納芋(いも)を潰し白蜜で伸ばして、氷となじむよ
うに工夫されている。香り、味ともに印象的な一杯だ

 妻の久美子さん(以下おばちゃん)が信太郎さんの思い出を語る。「主人は、駒沢公園の脇に車を止めてかき氷を売ってました。当時、プールがあって、午前中に電話がかかってくるんです。『今日出ますか』って。理由を聞くと、『帰りにかき氷を食べられるのなら、プールに行きたい。おじちゃんがいないんだったら行かないって子供が言うもので』って言われてね。『天気がいいから出ると思いますよ』って言うと、『よかった! じゃあ行きます』って」

かつて使われていたかき氷機。現在はあまり
使うことはないが、記念として保管している

 かき氷もさることながら、おじちゃんの人柄が子供たちからも愛されていた。たくさんいた友達からも電話がよくかかって来て、同じような会話が交わされる。その日出店してるか聞き、「いるなら行く」と皆答えた。

 おじちゃんは、人気者だったが、世話好きでもあった。「商売道具はもちろん車に積みますが、そのほかに必ず持っていたのがばんそうこうや消毒液の入った救急箱を持参していました」。公園で遊んでいてけがをした人の手当てに使うためだ。「『こないだ、だいぶ使ったから、点検しておいて』って頼まれてよく補充させられたわよ」。おばちゃんは、当時を懐かしむように少しだけ目を細めた。

二度と手に入らないグラス。昭和から使い続
けているが、きれいに丁寧に使われている

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