懐かしさと真心いっぱい 昭和のかき氷で暑気払い

 究極のシロップはなんと言っても「スイ」である。簡単にいうと甘いだけのシロップをかけたもの。メニューには「白みつ」と書いてある。かき氷を食べに店に入って来て、「スイ」って言えば、「はい」ってすぐ出せる。「今これができるかき氷屋は何人いますかね」。おばちゃんは、得意げに言った。粋な客などは、入ってくるなり「スイ」と一言。スッと出すと立ちながら食べてもう一杯。今度は、レモンにするかな、メロンにするかなどと考える。2杯も食べれば、サッと汗が引き店を後にする。「そんな食べ方をする粋なお客さんが昔はたくさんいたけれど、少なくなったわね。ワンシーズンに数人です」

真っ白で、見た目も美しい「スイ」。
    これを注文すると通に見られるかも   

 熱中症予防食にもなっていた。「本来かき氷は、体がパッと冷えて、汗がサッと引く機能性食品なんです。冬には体を温める食べ物がありますが、夏はなんと言ってもかき氷でしょう」

 石ばしは、地元の子供たちにとって、駄菓子屋的な役割も果たしていたし、今でも変わらない。子供だけで、かき氷を食べにくることもしばしばだ。「プリクラが流行った頃、私に見せにくるんですよ。そしてどこかに貼らせてくれって。やたら貼られても困るんで、店の一番奥のガラス戸の一部を解放しました。その名残がこれです」。ここに貼ってある子供たちがまた自分の子供を連れて店を訪れる。

店先につるされた段ボールの切れ端に書かれたお知らせ。
「落し物 当店で保管してます」。店主の優しさの表れだ

 こんなこともあった。「近くの小学校の先生と子供たちが10人ぐらいで店に来たんです。『先生早く早く。先生ここだよ』って。先生が言うには、『私は小学校の教諭をやっています。多くの子供たちの作文にこちらのお店のことが出てくるんです。一体どんなお店なのか今度先生も連れて行ってってお願いしたんです』」。先生もどんな店なんだろうって気になったんでしょうとおばちゃんは笑った。

子供用の小さな椅子も用意されている。
大人も座れるしっかりしたものだ   

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