平和かみしめ 絶品ロールキャベツシチューに舌鼓

新宿アカシア(東京・新宿)

retroism〜article201〜

 「『日本の洋食』っていうのは、西洋料理と和食のいいとこ取りなんですよ」

 1963 (昭和38)年にオープンした「新宿アカシア」の三代目・鈴木祥祐さんが、穏やかな表情でゆっくりと話し始めた。          アカシアの代名詞・ロールキャベツシチュー。最近できたレストランでは味わえないコクのある一品だ

 明治維新以降に渡来した欧米の料理は、日本人の好みに合わせて進化を遂げてきた。もともと日本人は、外国の文化を取り入れてリファインするのが得意だが、洋食もそれと同じ道を辿ってきたと言える。

 「ハンバーグとかカレーとか家庭で作れるので、子供の頃に母親に作ってもらった、『お袋の味』としての認識もあるかと思います」。昭和の子供たちにとって、肉じゃがや煮物とおなじレベルでもあった。言い換えれば、洋食は家庭の味でもあったのだ。だから、味が想像しやすいし、凝ったフランスやイタリアをはじめ他国の料理と比べて入りやすい料理だった。「日本人好みの洋食は、白飯との相性も抜群ですからね」。鈴木さんはほほえむ。

落ち着いた店内。「昔ながらのレストラン」といった趣がある

 数ある料理の中でもアカシアの自慢は、ロールキャベツシチューである。洋食と言えば、ハンバーグやオムライスなどが思い浮かぶが、イチオシにロールキャベツシチューというのは珍しい。鈴木さんの曽祖母が作るそれは、当時珍しがられ人気を呼んだ。「僕は会ったことがないんですが、ひいおばあちゃんは、ハイカラで料理り好きだったと聞いています。『ロールキャベツシチューは、肉と野菜が取れるから、料理としてのバランスもいいんだよ』と言って、ご飯のおかずになるような味付けを目指したようです」

(上)天井からつるされているシャンデリアもかれんな花を模したもの(下)花をモチーフにした明かりが随所で店内を照らす