平和かみしめ 絶品ロールキャベツシチューに舌鼓

 だから、外では食べるけど、家では作らないメニューでもあったとも言える。洋食屋の定番メニューだが、店の「売り」として位置付けるのは珍しい。「手で巻いてるから、人件費などのコストもかかります。ニッチなメニューではあるかなとは思いますが、他の洋食屋さんとの差別化で、ちょっとずらした「独自路線」といった意味合いですかね」。こうしてロールキャベツシチューという看板メニューが生まれた。「味は基本的に変わってませんが、昔に比べて(よりおいしく)進化していると思いますよ」と鈴木さんはうなずいた。

チーク材を用いた2階窓のストッパーは鉄製で、時代を感じさせる

 実際に食べてみると、トロリとしたソースで煮込んだロールキャベツシチューというような印象だ。老舗にしか出し得ない、料理人が受け継ぎ積み上げてきた深い味がする。目指しているのは、ご飯と一緒に食べたくなるおかずだという。「すごく特徴あるわけではないけれど、飽きることがなく、一度食べるとまた食べたくなる。炊き立ての白飯と相性抜群。ご飯に合わせて、ちょっとしょっぱめかもしれません」。それこそが、正しい日本の洋食なのだ。フレンチでもない、イタリアンでもない、アカシア独自のスタイルを目指したいと、鈴木さんは力強く言った。

現店主の鈴木さん。人懐っこい笑顔で話
を聞かせていただいた。料理人でもある

 店名は第二次世界大戦に絡む。「大おじが兵士として赴任した満州でけがをしたんです。入院した病院の窓からアカシアの花が美しく咲いているのを見て、『もし生きて帰れて、店をやるならアカシアと名付けよう』って決めていたそうで、無事生還し、曽祖母に話して店名を決めたのです」

窓はアール・デコ調を意識した作りになっている

 ここで食事をする機会があれば、黄色くて丸い可愛らしい花を少しだけ思い出してほしい。そして、平和をかみしめながら、心ゆくまで極上の料理を味わってもらいたい。

しんじゅくあかしあ
東京都新宿区新宿3-22-10
📞:03-3354-7511
営業時間:午前11時〜午後8時(L.O午後7時半)
定休日:不定休

文・今村博幸 撮影・JUN