平和かみしめ 絶品ロールキャベツシチューに舌鼓

 一説には、クリームシチューにキャベツで巻いたひき肉を入れる形で日本に入ってきたとも言われている。西洋料理は、日本に入ってきた明治時代、庶民には高嶺の花で、金持ちの外国人が食べるものだった。庶民に広がったのは、戦後である。アカシアがオープンしたのは、戦後20年近く経ってからだった。ある程度世間に洋食が認知された頃だったが、まだ値段は高かった。鈴木さんは言う。「いわゆる西洋料理は、1皿2000円から3000円ぐらいしたんじゃないですかね」

外観・店内ともに木がふんだんに使われ、渋い。窓からもれる
暖かなタングステン照明の明かりが家庭的で食欲をそそられる
 

 その頃、アカシアでは、ロールキャベツシチューは1人前130円だったという。激安である。しかも、曽祖母が洋食が盛んだった横浜まで行って学んだ「本場の味」だった。「ちまたではクリームシチューベースが定着せずに、コンソメスープだったり、トマトソース、しまいにはおでんの中に入れるようになったみたいです」。ところが、アカシアでは、50年前から変わらずクリームシチューを使う。味をそのまま受け継ぐのは、並大抵のことではないはずだ。「実際、難しいんですよね。煮るのは、鳥のスープ、そこに自家製のルーを入れてシチューを作ります、牛乳は入れません」。これがアカシアオリジナルのロールキャベツシチューだ。

外看板も厚い木製で味わいがある。上はアカシアの花と下は葉

 家庭でも、ハンバーグやオムライス、カレーなどは作られていたが、ロールキャベツシチューは多くはなかったと推測される。「手間がかかるんですよ。キャベツをゆがいたり、ひき肉を使った中身を仕上げたり、さらにシチューまで作らなくてはならない。シチュー用のスープも、当店では手作りですからね」。鈴木さんは、自信に満ちた表情を見せた。

   

(上)ライスに注がれる瞬間に滴るルーの一滴が食欲をそそる(下)たたずまいが洋食の王道を思わせる。味は濃厚でクセになるカレーだ