カブトムシ一筋45年 オーナーに安心届け続け

 ヴィンテージVWの楽しさの一つに、「ブロロロロ〜」というエンジン音がある。全く嫌な音ではない。かつて聞いていたことのある機械仕掛けを想起させる音だ。今の車に比べて当然のように大きく、うるさいと言う人もいる。しかしそれは、車というものをどう見るかによるのだ。「VWは、ライフスタイルとして楽しんでほしい車だと思います」と田村さんが目を細める。「僕も、国産車や他の外車にも乗りました。VWに乗り換えた時に、車を運転している実感を味わった気がしました。マニュアル車だったこともあると思いますが、より車らしい感じがしたんです」。当時を思い浮かべるように、田村さんは視線を遠くに向けた。「僕はバイクも乗っていたことがあって、スピード感がなんとなくバイクに近い気もします。実際にスピードはそんなに出てないはずなんですが、フロントガラスが近めにデザインされているせいなのか、見える風景がどんどん流れていくんです。他では味わえない不思議な楽しさですよ」

1946年製。英国軍管理下の時代に生産された貴重
なモデル。世界に5台しか残ってないうちの1台だ

 形状からくるものと思われるが、居住性にも優れていると田村さんはうなずく。「狭い感じや圧迫感はありません。頭の丸いフォルムのせいでしょう。そういう意味でも、よくできた車だと思います。あっという間に好きになって、ずっと乗り続けたいと思わせてくれる車ですね」。よくできた車というのを証明するのは、元々の作りがよかったことで、80年もの間、世代を超えて作られ続けてきたと言う事実だ。「誤解を恐れずに言わせていただけるなら、『車らしい車』に乗りたいなら、一度でいいから旧車に目を向けていただきたいのです。例えば、VWにも付いてる三角窓から入ってくる風の気持ちよさは、他では味わえませんよ」

古いオイル缶。爪状の缶切りで開けた三角の切れ目が入っている。店内装飾品

 「VWは、かっこいいと思います」。 田村さんが突然言った。「一般的には丸っこくて、『可愛い』と言う表現をされますが、僕は、『格好いい』と言いたいですね。さっき言った三角窓も僕は格好いいと思ってます。だって、窓が回るんですよ」

 一部の人たちには、最後に乗りたい車とVWは言われているらしい。「現役のものを使い続けて、そこにまつわる雰囲気までみなさんに味わってもらいたいというのが僕らの願いです」

横浜・本牧の大通りに面した店舗は、よく目立つし美しくもある

 今でも残る年代物をよみがえらせ、03年に生産が終了した空冷VWをサポートし続けるFLAT4。その存在がある限りVWの命が尽きることはないだろう。

ふらっとふぉー
横浜市中区本牧和田12-4
📞:045-305-6900
営業時間:午前10時〜午後6時(土・日)午前10時〜午後7時
定休日:なし(GW、夏期、年末年始休業あり)

文・今村博幸 撮影・JUN