鎌倉の中心でコーヒーと紫煙とレコードに酔う

 そのコーヒーと一緒に食べたいのが、飯島さん手作りのレアチーズケーキである。「材料は、チーズに生クリームとヨーグルト、卵黄と砂糖、生のレモンを搾って入れて、ゼラチンで固めます。朝作って冷蔵庫に入れて、3日目ぐらいが食べごろです。コーヒーによく合いますよ」と飯島さんは胸を張る。食べてみると、確かにコーヒーとチーズケーキの「マリアージュ」は、めっぽう相性がいい。お互いが味を引き立て合うのだ。飯島さんは、「うちのチーズケーキは、ビールにも合うんですよ」声を少しだけ潜めて言った。  

高級感あふれるMIKASAの皿が使われている。「ケーキの色と合ってるでしょう」と飯島さん。単品650円、コーヒーとセットで1000円

 1976(昭和51)年、レスポアールは開店した。飯島さんが当時を振り返る。「『アンノン族』がはやっていて、雑誌を抱えた若い女性たちがたくさん鎌倉の街を歩いていた頃です」。横浜と鎌倉の境である栄区の出身である飯島さんは、そんな鎌倉を自らの店の場所として選んだ。「学生の頃遊びに来るのは、鎌倉でした。住所は横浜でも、鎌倉の方が近かったし、地元という意識が強かったのです」

思い入れたっぷり入れて作った北欧風の内装。レリーフが施されたしっくいの壁にこだわりを感じる

 店名の由来もなかなかユニークだ。「赤いシリーズっていうドラマがあったんです。山口百恵と三浦友和主演でした。あるシーンでヨットが出てきて名前がレスポアールだったんです。これだって思いましたね」。希望という意味も気に入った。それから44年。真ちゅう製ミルク用のピッチャー、特注の椅子、一枚板のカウンターなども変えずに店を続けてきた。「30年ぶりに訪れたんですけど、全く変わってませんねって、言ってくださるお客様が来店くださると、変えずにやってよかったなって思います」

レジの奥に置かれたターンテーブル。「レコードプレーヤーで音楽を鳴らしてるんですねって、お客さんが気づいてくれるとうれしいですね」

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