知識と経験を元に文字や写真で時代をつなげたい

 古文書を読めるようになったのもその頃だった。それが古本の面白さの一つであることに気づき、古本というものの真髄がわかるようになった。「古本のもう一つの魅力は、時代を記述することで、未来に繋いできたことです。記憶だけではなくて、文字や写真で時代をつなげていくものが古書だと思います。時代を伝えている意味もあります。無数に出版された本の中には、捨てられてしまったり、消失してしまったものもあります。でも、今残っている書物だけでも、過去と未来を結んでくれる。その橋渡しの感覚はあります」。今では絶対に作れない本や写真集がある。家族や友達に見せたいという本に図書館などで出合うと、彼らは必ず古書店をまわり、手に入れる努力をするのだという。

床にひもで結ばれた文庫本が積みあげられている。店内は
割と煩雑。これでも探しやすくなったと五十嵐さんは言う

 最後にこの商売の楽しさを五十嵐さんに尋ねてみた。「自分が積み重ねてきた知識を信じて、仕入れた本が店で売れて、『これいい本だね』って言われた時には、古本屋冥利に尽きるって思いますね。うれしいです」。それは、人と共感できた充足感でもあると、五十嵐さんは目を細めた。

 帰り際、心なしか店の棚が誇らしげに見えた。

ふるほんせんたー
東京都武蔵野市吉祥寺南町1−1−2
📞:0422−47−0727
営業時間:午前11時〜午後9時
休み:年末年始のみ

文・今村博幸 撮影・JUN

 

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