知識と経験を元に文字や写真で時代をつなげたい

 古本屋には、新刊を売る店とは全く違った楽しみ方があるのも事実だ。古本には、その時代の粋を集めた言葉が文字として残っている。「有史以来、人々の考え方は時代によって変わってきました。古本には、それぞれの時代のどんなものも見かけが違うし、人間たちの思考も思想も違う。近年のことで言うと、70年代と80年代は、かなり考え方が違うことを私たちは本で知ることができるんです」独自の技法で荒木経惟しか撮れない表情を切り取った「少女物語」(改訂版)も

 仕入れの仕方は、自分の好きなジャンルを軸にして横に広げている。多くの古本屋を訪ねると必ず感じるのは、「こんな本もあったんだ」ということ。言い換えれば、古本屋には独特の深度がある。深めるには膨大な時間が必要だ。長くやればやるほど、本に対する英知は深淵(しんえん)になっていく。

硬そうな内容の前に、かわいいフィギュ
ア。そのコントラストが不思議と面白い

 「私が、家業を手伝い始めたのは、16歳ぐらいの時でした。ちゃんとやり始めたのは、20歳をすぎてからだったと思います。だから、25年近くはこの仕事をやっていることになります。本格的に知識の蓄積が始まったのは、神田の市場で働いてからでした」。昔を思い返すように、五十嵐さんは宙を見上げた。「その時、神田の重鎮に言われたのは、死ぬ(引退する)まで勉強しなさいってことでした」棚に収まりきらない本が床に積まれている。昔の古本屋はこんな光景は当たり前だった

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