知識と経験を元に文字や写真で時代をつなげたい

 レジ横の三つの棚には、そんな本が行儀良く陳列されている。新しく入ってきた本や写真集など五十嵐さんの感性に響いたものである。中から気になる本を2冊を選んでもらった。「(左手に持っている)1冊は、フランスからベルギー地方を中心とした芸術性の高いマンガ「バンド・デシネ」の巨匠グィド・クレパクスの作品集です。もう一冊は、普通にしていたらあまり手にすることはないと思われる『世界毒草百科図鑑』です。この手の風変わりな本を、当店は得意としています」。五十嵐さんは、少しだけ得意げな顔をした。

夜のパリを情緒豊かに切り取ったブラッサイの「やさしいパリ」

 もう一つ面白いのが、オカルト関係の棚だ。「私自身も好きなジャンルで、お客様の中に、詳しい方もいるので、かなり質の良い棚だと自負しています。数的にもそろえてありますし、専門店にしか売ってない本も、極力集めるようにしています」。だから、常連や古本屋好きの中には、「古本センターに行くと、面白い本が必ずあるから行ってみよう」と言うのが合言葉にもなっている。「あの本なら、五十嵐さんに聞けばなんとか調べてくれる」という客も多いという。

袋に入れられ、ひもでつるすという展示の仕方は、
 新刊屋でも、古本屋でもあまり見ない、面白い風景だ

 それらの言葉は、古本屋を生業とする者にとっては、最高の賛辞だろう。開店は1981(昭和56)年。五十嵐さんの父親が吉祥寺に店を構えてから40年以上となり、長年の実績が客を喜ばせているのだ。日頃から「こんなの探してるんだけど」という客の質問が頻繁に投げかけられる。「今までの経験で、大体どのあたりを検索すればいいか想像できます。ピンポイントではなかなか難しい時も多々ありますけどね。まず、ジャンルを聞いてから、そこら辺をとっかかりにして、探していきます」

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