昔ながらの商店街の絶品総菜と温もりにほっこり

コラム其ノ拾陸(特別編)

retroism〜article156〜

 普段着の人の波が途切れない。

 日々の暮らしが彼ら彼女らの姿から見てとれる。「いらっしゃい、いらっしゃい!」。大きな声が、魚屋や八百屋から飛んでくる。大型スーパーやショッピングモールなどになくて街の商店街にあるのは、この活気と何気ない会話である。

 「今日は、イサキのいいのが入ってるよ」。「煮るのと焼くのとどっちがおすすめ?」と客が聞く。「脂が乗ってるから、焼いた方がうまいね」。「じゃあ、それ1匹いただくわ。内臓だけ取ってもらえる?」。「あいよ。ちょっと待っててね」。ものの2分もしないうちに、すばやく、経木に包まれて出てくる。「はい、350万円ね」などと定番のジョークも飛び出す。

 食材の話だけではない。近所のうわさ話にも花が咲く。「そういえば、入院してた高木さん(仮名)家(ち)のおじいちゃん、元気になって退院したらしいよ。病気する前よりピンピンしてるって」。「そりゃあよかった」。そんな話をしている時に、ちょうど高木さんが通りがかったりする。「ちょっと高木さん。よかったねー、元気になって。死んじゃったかと思ってたわよ」。きつい冗談も昔ながらの商店街の魅力だ。「悪かったな、生きてて。でも、もう大丈夫、仕事(店)も始めてるよ」。ニコニコしながら、去っていく。

夏になると目にするかき氷の「のぼ
 り旗」。涼しげだ=砂町銀座商店街で