昔ながらの商店街の絶品総菜と温もりにほっこり

 シャッター商店街という言葉を聞くようになって久しい。街を歩くと、閉まっている商店が目立つことも事実だ。中小企業庁から令和3年(2022)年度に出された、「商店街実態調査報告書」によれば、商店街の景況は「衰退している」「衰退の恐れがある」を合わせると、実に70%近い数字が出ている。確かに、多くの食料品店が、大型スーパーに押されていることは間違いないだろう。

 しかし、考えてみてほしい。肉屋にしろ八百屋にしろ、魚屋にしろ、子供の頃から商品に触れ、手伝いをさせられ、親の跡を継いでからは市場に出かけ自分の目利きとセンスで仕入れた商品を売る。彼らプロフェッショナルの選ぶ野菜や魚は間違いなく新鮮でおいしいのだ。これほど信頼できる店は大型スーパーやショッピングモールには少ないだろう。

 総菜屋の味も同様に、試行錯誤を繰り返して作り上げ、厳しい地元の主婦たちの目にさらされながら育てられてきた唯一無二の「オリジナル商品」なのだ。個人商店の魅力はまさにそこにあり、その集合体である昔ながらの商店街の持つポテンシャルは、高いと言わざるを得ない。

関東で一番長いと言われる戸越銀座商
店街。1.3㌔に約400店が軒を連ねる

 大型スーパーは1カ所でなんでもそろうという利点がある。しかし、商店街はそれが長く伸びただけで、歩く距離はそれほど変わらないのではないだろうか。だとすれば、利便性でも、商店街は負けてはいない。雑貨屋も靴屋も洋服屋も、食堂やコーヒー屋もある。アーケードに覆われていれば、雨に濡れることもなく快適に買い物ができる。

 かつて商店街は、人とモノで活況を呈していた。数は減っているが、十条銀座商店街(東京・北区)、砂町銀座商店街(同・江東区)、巣鴨地蔵通り商店街(同・豊島区)など、まだまだ元気な商店街は残っている。

 願わくば、ちょっと足を延ばしてでも、今一度、商店街を見直してほしい。買い物の楽しさは、必要なものをカゴに入れお金を払うだけではないはずだ。食べ歩きするもよし。そこにまつわる触れ合いが、人の温かさを感じさせてくれる。大型店でもショッピングモールでもなく、「やっぱり商店街で買ってよかった」と深い満足感を味わえるからである。


文・今村博幸 撮影・SHIN