聖子と明菜、キョンキョンが残したもの

 そして、もう一人忘れてはならない存在がキョンキョンこと小泉今日子だ。デビュー当初は、王道のアイドル路線を突っ走っていたが、聖子や明菜が大ブレークを果たす中、二人ほどの圧倒的歌唱力があるわけではなく、いわば数あるアイドルの中のひとりに過ぎなかった。そんな彼女が5枚目のシングル「まっ赤な女の子」で勝負に出た。それまでの聖子ちゃんカットをバッサリ切ってショートカット(しかもえり足は刈り上げ)にしたのは正直度肝を抜かれた。機動戦士ガンダムに例えるなら、主人公のアムロ・レイがニュータイプに覚醒していくような衝撃的な出来事だった。物事に対して斜に構えて生きてきた筆者は、王道の聖子には全く興味が湧かず、かといって明菜に走るのも気が引けた。そんな筆者の心に突き刺さったのがキョンキョンだった。歌以外にも、ファッションに注目が集まったり、過激なグラビアが話題になったりした。特に毎日グラフ別冊「活人」の表紙での全身黒塗りの姿は衝撃的だった。また、自分のことを「コイズミ」と呼ぶなど、サブカルチャー系における影響力はすさまじかった。以降、唯一無二のアイドルとして確固たる地位を築いたのは必然だったといえる。


「#検察庁改正案に抗議します」のツイ
ッターなど小泉今日子の影響力は今も

 翻って、現在のアイドル事情を鑑みると、AKB48グループや乃木坂46などの坂道シリーズに代表される「会いに行けるアイドル」はファンとの距離が縮まった。アイドルは身近な存在になり、隣のちょっと可愛いコが好まれ、かつてのように「アイドル=抜群に可愛いコ」という定義は崩壊した。しかも、ピンで歌うのは、松浦亜弥、藤本美貴あたりが最後だと記憶している。

 本来アイドルとは偶像であって、決して手に届かない遠い存在だからこそ憧れるのである。没個性といわれる令和の時代だが、超絶なルックス、聴くものを魅了する歌唱力はもちろん、一度聴いたら忘れられないような素晴らしい楽曲とともに、かつての聖子、明菜、キョンキョンのような個性的で魅力あるアイドルが彗星(すいせい)のごとく現れることを切に願う。

文と撮影・SHIN

 

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