ヤマト、ガンダム、エヴァの功績と遺産

 宇宙戦艦ヤマトが大人向けアニメの先鞭をつけたとすれば、それをより確かなものにしたのが「機動戦士ガンダム」(ファーストガンダム)だろう。舞台は宇宙世紀0079年。人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって半世紀が過ぎた。地球から最も遠い宇宙都市サイド3は「ジオン公国」を名乗り、地球連邦政府に独立戦争を挑んできた。国力では連邦に劣るジオンだがモビルスーツ(MS)と呼ばれるロボット兵器を導入、独立を認めない連邦政府も新型モビルスーツ「ガンダム」を開発して対抗する。アニメは、後に「1年戦争」と呼ばれた連邦政府とジオン公国争いの終盤3カ月を描いている。

 初回放送は79年4月7日。平均視聴率は5.3%と振るわなかった。当初52話を想定してたが43話に短縮された。その後、熱烈なファンが中心となり口コミで評判となった。同時にアニメ雑誌などが特集記事を組むと、次第に世間の耳目を集めていった。本放送が終わっても、ファンの熱は冷めやらず、再放送、再々放送された。その後、バンダイから発売されたMSのプラモデル(通称ガンプラ)が爆発的に売れ、全国のおもちゃ屋の棚から一斉にガンプラが消えた。当時の男子は、例外なくモビルスーツの格好良さにヤラれ、ガンプラに熱中した。

 モビルスーツ以外にも、ミノフスキー粒子、スペースコロニー、ニュータイプ……。聞いたことがない言葉のオンパレードだったが、どれも説得力のあるナレーションが加わり、リアリティーが感じられた。特にモビルスーツは鉄人28号、マジンガーZなどの従来型スーパーロボットではなく、あくまでも兵器の一つという位置付けで、それまでのロボットアニメとは一線を画していた。主人公はアムロ・レイという地球連邦政府の少年だが、敵のジオン公国少佐、シャア・アズナブル側にも自分なりの「正義」があり、勧善懲悪でない内容も当時のアニメとしては画期的だった。視聴者は連邦派、ジオン派に分かれて時には議論にも発展した。ちなみに筆者はジオン派で、好きなモビルスーツはシャア専用ザク(MS-06S)だった。当時はビデオデッキは家庭に普及しておらず、テレビとラジカセを専用のケーブルで繋いで、放送を毎回「録音」しては擦り切れるほど再生を繰り返した。

 原作者の富野由悠季(当時は喜幸)は「打倒ヤマト、打倒西崎」を掲げており、そのもくろみは見事成功した。ファーストガンダム以降も「機動戦士Zガンダム」「機動戦士ガンダムZZ」「機動戦士Vガンダム」などが製作された。また、OVAでは「機動戦士ガンダム逆襲のシャア」「機動戦士ガンダム0080ポケットの中の戦争」「機動戦士ガンダムF91」「機動戦士ガンダム0083」「機動戦士ガンダムUC」「機動戦士ガンダムTHE ORIGIN」なども作られた。これら以外にもガンダムシリーズのアニメは多数あり、現在でもサーガは続いている。

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