登録有形文化財の木造建築で絶品の天丼にうなる

 「今はそれを守っていくのが僕の使命だと考えています。店は狭いけれど、昔ながらの天丼発祥店として商っていることに意味があると信じています。日本が誇る食べ物、ひいては食文化を後世に残したいと思っています」。若林さんは、力強く宣言してくれた。「この建物が朽ちるまで、商売を頑張って続けていきますよ」


(上)生きたアナゴ網に移して水槽でしばらく置く。「アナゴ
を水槽に入れることで運ばれている間のストレスが取れ、い
っそうま味が増します」。(中)新鮮なアナゴ。天ぷらダ
ネとしても
そのおいしさは上位に入るだろう(下)〆たア
ナゴを手際よくさばいていく。難しいものではないとご主
人は言うが、正確さやスピードは長年の鍛錬のたまものだ

 天丼の味自体は変化してきた。実際に食べてみると、歴史を積み重ねた味を感じさせる。「昔は、濃い味でした。タレで食べさせる感じです。食材も決まりがあって、エビと小魚とかき揚げが入って初めて天丼が完成します。最もバランスの取れた組み合わせなんです。加えて野菜を少々。レンコンなどは食感も楽しいので入れてます。歴史を感じる味がすると言っていただいたのは、味のバランスを考えて無駄なものが入っていないからだと思います」

アルマイトの鍋のふた。使い込まれた感じがひしひしと伝わる。

 天ぷらは優れた調理法であるが、難しい料理でもある。「一生勉強だし、修業も必要です。あと、同時に進化し続けないとダメです。絶対変えちゃいけないものはあります。エビと小魚、かき揚げは変えないけど、魚は日によって変わりますね」

すりガラスも当時のまま。木の枠と相まって店内の風情を盛り上げる

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