なぜか知らねど ご当地ソングに思いをはせてみた

コラム其ノ拾陸(特別編)

retroism〜article238〜

 最近とんと耳にしなくなった歌に「ご当地ソング」がある。理由ははっきりとは分からないが、日本全国、行こうと思えば、日帰りできるほど、交通網が発達していることが、理由の一つかもしれない。また、インターネットの発達とともに、地方の景色や様子を見られることで、実際に旅をしているような気分になれることも関係しているのではないだろうか。

 昭和の時代には、音楽によって、旅情を感じ、その土地に思いをはせるのも楽しいものだった。その頃のレコード会社は、「都会賛美調」「地方賛美調」「股旅やくざもの」などをはじめとする、いわゆる「旅の歌」を大量に世間に送り出した。地方を魅力あるものとして歌われた曲には、都会と地方の対立感情があり、股旅やくざものには、戦争が終わった後の社会不安が横たわっていた。昭和歌謡は「旅の歌」から始まったという説すらある。大阪府吹田市にある国立民族学博物館では、そんな見解を論文で発表している。同論文によれば、「全音歌謡曲大全集」に、1987(昭和62)年までに収録されている2708曲の中でも、歌詞に地名が含まれている歌謡曲は40%を占めているという。

長崎・オランダ坂。「長崎は今日も雨だった」
の歌詞にある石畳は雨に濡れていた