なぜか知らねど ご当地ソングに思いをはせてみた

 その膨大な数の楽曲の中から、気になった曲をピックアップするのは、非常に困難だが、印象に残っている何曲かを、筆者の独断と偏見で紹介したい。

 まず、ご当地ソングで思い浮かべるのは、内山田洋とクール・ファイブではないだろうか。ご当地ソングをたくさん世に送り出している彼らの楽曲の一つである「中の島ブルース」(秋庭豊とアローナイツ=当時は秋庭豊とシャネル・フォー名義と競作)は、札幌、大阪、長崎と北から南まである「中の島」が網羅され、幅広い土地を巡る感じがウケた。直立不動、無表情で眉間(みけん)にしわを寄せて歌う前川清の歌唱方法も話題になった。「長崎は今日も雨だった」も印象深い。「ああああ〜、長崎ぃはぁ〜ぁ〜ぁ」の部分で使う独特のビブラートを利かせた歌唱は多くの人にまねをされるほど人気があった。「そして、神戸」もいい曲だ。「神戸ぇ〜、泣いてどうなるのか」という意味がわかりにくい歌詞で始まり、途中で、少し曲調が変わり、最後は細かい音符に歌詞を乗せて終わる、波乱に富んだ興味ある曲だった。その他、CMにも使われた「東京砂漠」も記憶に残る一曲だ。

横浜・伊勢佐木町にある青江三奈の歌碑(左)。グランドピアノをかたどっていて、スイッチを押すと「伊勢佐木町ブルース」が1分間流れる

 青江三奈が歌った「伊勢佐木町ブルース」は、ミリオンセラーをたたき出した。ため息とともに始まるイントロは、世の男たちをメロメロにした。あのくらいなら今でもリリースできるのか、できたとしても問題になるのではないかと疑われる。そのくらい色気があった。そして、エンディングでは「ドゥドゥビ ジュビドゥビ ジュビドゥヴァ…灯(ひ)がともる」という歌詞で終わる、超がつくほどの個性的な楽曲に仕上がっていた。青江に関しては、これが最大のヒット曲と思っていたが、その後にリリースされた「長崎ブルース」は120万枚​​、「池袋の夜」は150万枚を売り上げている。筆者は、この歌にはとても親近感がある。なぜかといえば、叔父が酒を飲むと必ず歌っていた曲だからだ。