音のヨーロー堂 (東京・浅草)
retroism〜article33〜
浅草はいつもにぎやかだ。
「寺のそばを歩けばお経が聞こえてきたり、路地裏では三味線が流れてきたりします。かつてはチンドン屋も日常の中にありました。これらはまさに、大切に残したい『浅草の音の風景』なんです」。演歌や昭和歌謡のCDやカセットを中心に商う「音のヨーロー堂」(以下ヨーロー堂)の店主・松永好司さんが、とても聞き取りやすい澄んだ声で話す。
美空ひばりの新譜とともに、実力派の島津亜矢や2017年に紅白出場を果たした丘みどりを特集した棚。ヨーロー堂ならではと言っていいだろう
その名残は店にしっかりと現存していた。三味線、浅草オペラ、新内節、小唄などのタグが棚に並ぶ。話芸の伝統である講談や浪曲なども、この店では健在だ。「ここ10年ぐらいの間に出た大道芸や浅草オペラのCDは他ではあまり見かけないと思いますよ。音楽って語り継いでいかないと消えちゃう。浅草的な音を絶やすのは忍びないんです」
今を時めく演歌歌手のポスターが、店内にたくさん貼られている。彼らを精いっぱい応援している松永さんの気持ちがひしひしと伝わってくる