演歌と昭和歌謡推し 老若男女が集う老舗店

   「最近の歌手の中で起こっているのは、演歌や伝統芸能、伝統話芸という昭和の文化を、新しい解釈で発信していこうという動きです。昔のままで保つのも大事ですが、昔を忘れることなく新しいい音楽を生み出す流れも確実にあるんです。私はそんな人たちを応援していきたいのです」.

   また、カセットテープをしっかりと置いているのもヨーロー堂の特徴である。「年配の方にとって、カセットテープは使い慣れたメディアです。だから、私の店では、ないがしろにできないアイテム。踊りやカラオケの練習には、同じ場所を何度も繰り返して流す必要があって、カセットテープはその意味でも、キュルキュルと簡単に戻せるという、使い勝手の良さもありますね」

小さいながらも舞台があり、客席も用意された2階のホールは、浅草の香りがプンプンする。プロモーション時には、客であふれるという

 さらに、ヨーロー堂には、一般のレコード屋(CDショップ)にはない、独自のスペースが存在する。入り口すぐ右側にある階段を上がると、懐かしさ感満載のステージと客席が用意されているのだ。20年ほど前に作られ、演歌歌手がプロモーションをする場所だ。そこには浅草のど真ん中で店を張ってきた、松永さんの強い気概が詰め込められている。「20年ぐらい前、演歌や歌謡曲が衰退していた時期がありました。ちょうど氷川きよしさんが注目され、山内惠介さんが出てきたりと、新人が頑張っていた頃でもあったので、こんな素敵な歌がありますよ、と自分の店から情報発信をしたかったんです」 

  昭和の時代、若手の演歌歌手がレコード屋でキャンペーンを行うのは当たり前だった。平成になり、そんな慣習も少なくなった時、これだけ立派な舞台があって客席もある店はなかった。「プロモーションなのでCDを買っていただきますが、その上でお客様にも楽しんでいただければと思っています」

雷門から歩いてすぐ、浅草のど真ん中に店はある。比較的年齢層の高い客が、ひっきりなしに出入りしてにぎやかだ

 年配の客も多くCDやカセットテープを買いに来る。店内にあふれるのは、「音楽は若者だけのモノではない」と、いう老若男女の共通の高揚感だ。

 聴くジャンルは違えども、老いも若きも音楽を楽しんでいたのが昭和。そんな輝ける時を思い出させてくれるのがヨーロー堂なのである。

おとのよーろーどう
東京都台東区浅草1-3-6
📞03-3843-3521
営業時間:午前10時半〜午後5時
定休日:木

文・今村博幸 撮影・柳田隆司