新橋と昭和をこよなく愛する元会社員の夢の空間

 当時、正しいとされていた歴史上の事実と言われていたことも、鎌倉幕府の成立年など研究が進み変わったことが、今の本と見比べることで分かる。さらにわかりやすいのは、ファッションや暮らしの変化だ。令和と昭和は明らかに違う時代なのである。「タレントを見ても、昔のほうが奇麗だと思うんです。1970年代の写真集のほうが胸に刺さる。そんな比較が可能なのが、当店の特徴でもあります」。そういう意味でも、同ブックカフェの存在の意義は高い。

(上)読み出したら止まらなくなって、ついつい長居してしまう客もチラホラ(下)ご存じ「三丁目の夕日」。一番上が「映画化特別編」。以下はオリジナルの「夕焼けの歌」

 店内に並ぶのは約6000冊。主に鈴木さん自ら古本屋に足を運んで買いだめてきた。地方出張の時には、時間が空くと観光する社員もいたが、鈴木さんは、真っ先に本屋を探した。「サラリーマン時代に出張が多くて、観光地には行かずに本屋巡りをして、仕入れていました。商品に関しては、当たり前ですが、僕の好き嫌いが色濃く表れてしまいます。マンガ、全集、歴史・経済系の小説が多いかもしれません。司馬遼太郎や高杉良が好きでしたから」「水木しげるのあの世の事典」(手前左)など店主が選んでくれた珍本の数々

 地方の本屋ならではの楽しみもあったと鈴木さんは回想する。「地方に行けば、こんな本があるんだってうれしい驚きもありました。神保町にも探せばあるんでしょうけど、値段が全く違いましたね」。本棚の方を鈴木さんがちらっと見た。「地方ならではの本も多かった。例えば、地元出身の作家なり、その土地で名の知れた人が書いた本とかは貴重でした。歴史のある書店があったり、東京にはない本探しの面白さがありました。本屋巡りは、僕にとって楽しい観光でした」

本棚は二重になっていて、整然と並べられている