あふれる銭湯愛をカフェで具現化 レトログッズも

Sd Coffee北千住(東京・北千住

retroism〜article94〜

 「ペナントだらけのあなたの部屋に〜♪」と歌われたのは、1982(昭和57)年にリリースされた河合奈保子の「Invitation」だった。

店全体がある種のパロディーで、極め付きはこのペナント。北千住のシンボル・お化け煙突、タコ公園、銭湯絵、千住葱(ねぎ)などが描かれている

 当時、修学旅行のお土産の定番であり、部屋の壁上部や天井には、必ずと言っていいほど飾られていた時代があった。そんなペナントを新たに作り、売っているのが東京・足立区にあるにカフェ「Sd Coffee北千住(以下Sd Coffee)」だ。店内には、思わず買いたくなる面白グッズが所狭しと並んでいる。

 店主の鈴木保幸さんが説明する。「近年では、下町の雰囲気が色濃い北千住って、外国のお客様もたくさん来るし、観光地的な匂いがするんですよ。観光地にはお土産がつきものだと思いついて、いろいろなグッズを作るようになったんです」

オリジナルの木の桶に乗って供されるホットドッグ。むっちゃシリシリチーズ1100円。ハムの名店「千駄木 腰塚」の特性ソーセージは食べごたえ十分だ

 それが、「THE NORTH SENJYU」などと書かれた帽子や木製の升、迫力あるホットドッグが描かれたキーホルダーであり、ペナントだった。「ペナントは、現在作っている工場が日本にはありませんでした。海外で作るのはなにか違うと思い、なんとか国産でやりたいと思いました」。鈴木さんならではの麗しいこだわりだ。「作ってくれるところを探したら、お相撲さんの化粧まわしを作っているところに行き着いたんです。さらに運動会などに使う旗を製造している場所にもお願いしました」

客層は6割が女性、20代が多い。どの顔も例外なく楽しそうだ

 最初、今の若者には、これが何なのかすらわかってもらえなかった。「実際に、『面白いから買いたいけど、どうすればいいんですか?』って言われました」。鈴木さんが説明すると「なんだかわからないけれど、まぁいいやって買ってくれる人も多いんですよ」。鈴木さんが笑う。「今、ペナントを入れる三角の額縁を作っています。居間に飾ったら格好いいですよ」

 Sd Coffeeがオープンしたのは4年前(2017年)である。「Sd」には二つの意味がある。ひとつは実家の静岡で父親が営んでいた電器店『鈴木電気』、もう一つは『銭湯大好き』をそれぞれローマ字表記した頭文字だ。「街の電器屋を継ぐことは今の時代厳しいと感じていました。ただ、どこかのタイミングで、のれんは継がせてほしいって話を父親としていて、最終的に守った形です」

電球や自転車、銭湯グッズなどが並ぶ店内は、懐かしくもあり不思議と落ち着いた空気が漂う

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする