あふれる銭湯愛をカフェで具現化 レトログッズも

 形や内容が違ったとしても、父親の血脈をきちんと受け継いだ鈴木さんの男気はあっぱれだ。もともと、商売をしたい気持ちはあったと鈴木さんは言う。「商売人の家庭で育っているので、お客様と接したりするのは好きでしたからね」

「銭湯大好き」という気持ちは、若い頃の苦労が原点だ。実家を離れ、東京で自活を始めた頃、アパートには風呂がなかった。近くには夜中の1時まで開いていた銭湯があったが、終電で帰ると閉店時間を過ぎていることも少なくなかった。「でもね、銭湯の方が、僕の状況をわかってくれて、こっそり入れてくれたりと、とてもお世話になったんですよ。本当にうれしかった。人の情を強く感じましたね」。やがて結婚し子供ができてから、懐かしさから改めて銭湯に通うようになる。「気がつくと、銭湯が教育の場になってました」。優しい目をした鈴木さんが、銭湯の魅力を語る。

タイルで作られた水場が、銭湯をほうふつとさせる

 「下町っていまだに、雷おやじみたいのがいて、桶(おけ)の置き方や湯船にはそっと入るものだとか、洗い場でも、隣の人にお湯が飛ばないように静かに扱うことや、水も大切な資源だから遠慮して使えとかーー。さまざまなことを教えてくれるんです。身内以外の人に注意してもらえたりしかられるのは貴重な体験です。そんな文化が銭湯には残っている。特に千住あたりはそれが強いと思います。人生の縮図ですよね」

 世の中が、他人に対する思いやりや環境に対する配慮などで成り立っていて、そこで学んだマナーは、社会生活の中にも応用が可能だと鈴木さんは力を込める。「子どもたちを育てていく中で、そんな意味でも銭湯って大切だなって思っています」

壁に描かれた銭湯絵は、日本最高齢絵師である丸山清人氏(86)の作。本物を好む鈴木さんの強い意志が表れている

 銭湯をコンセプトにした理由がさらにもう一つある。自分が大好きな銭湯という空間を知らない若い人たちに、知ってもらいたかったと言うのだ。「ちょっと変わったカフェに行ってみたら、銭湯グッズや銭湯絵があって、なんだか面白そうだと感じてもらえたらうれしい。そして今度は、銭湯を体験してみようかなって思ってもらえたら最高ですね」。銭湯を知らない世代にも、ましてや銭湯好きなら一度は足を運んでみる価値ありだ。

ホットドッグは7種類あるが、「どれもおいしそう」なので
選べない人は、ガチャガチャで出てきたキーホルダー(7
種類のいずれかが入っている)を頼りにという遊び心も 

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