あふれる銭湯愛をカフェで具現化 レトログッズも

 店内には、古くて懐かしいものがあふれている。「おもちゃ箱」であり「宝箱」だ。開店当初は、もう少しおとなしい内装で、おいしいコーヒーを出す店としてオープンした。もともとあった、「鈴木電気」と「銭湯大好き」というコンセプトに従い、手探りで店を作ってきた。電器屋と銭湯を軸にして、店の内装または飲み物やフードを提供すれば、面白いものができると考えた。「洋風と和風、新しいものと古いものなど、さまざまな文化をかきまぜて新しい文化にしてしまうところが、日本人の得意な部分だし、いいところですよね」

 店を彩るグッズは、自らコツコツ集めたものも多い。鈴木さんの内部には歴史あるモノに対する思いが強いのだ。「日本メードが全てとは言いませんが、電化製品でも、日本で作られた商品や部品は、すごく良くできているんです。もともと電器屋なのでそのあたりはよく分かります。長く使い続けることで、作った人の思いや工夫が見えてくるところも楽しい。だから、デザインも含めて昔のものっていいなって思うんですよ」。置いてあるモノも凝っている。スロバキアの映画館やスウェーデンの小学校で使われていた椅子、テーブルは懐かしのテレビゲーム台などがセンス良く店内に並ぶ。

フードをおかもちで運ぶ店主の鈴木
ん。
人間性豊かで温かな人柄に触れた
客は、自ずとリピーターになるという

 飲み物の基本となるコーヒーがおいしいのは、手間ひまを惜しまないからだ。4種類の豆を自家焙煎(ばいせん)してブレンド、ハンドドリップで落としている。「ほぼ毎日焙煎(ばいせん)します。ただ、ひきたてのほうがいい場合と、少し寝かせたほうがおいしくなるものもあるので、豆によって調整します」。焙煎した豆は、産地によって寝かせ方を変えて、それぞれ別に焙煎した後にブレンドする念の入れようだ。味に関しても全てテイスティングして確認する。「どうせなら、ちゃんとやりたいですから」と鈴木さんは、自身に満ちた表情でうなずいた。

入り口に置かれたコカ・コーラの広告入りのベンチが思わず目に留まる

 思わず笑ってしまうようなネーミングとビジュアル的に迫力あるホットドッグ、パフェなどのフードは、スタッフと意見を出し合いながら作り上げたものだ。「昭和感、銭湯感、電器屋感が出るように、さらにちょっとおふざけ感も入れながら、若い人たちに、どうアジャストしていくかを考えます。お客様の年齢層は、高校生からお年寄りまで幅広いですよ。お孫さんに連れられて来店してくださるおじいちゃんやおばあちゃんたちには『懐かしいね』とか、『昔あったよね』とか言いながら楽しんでいただいています」

 話を聞けば聞くほど、鈴木保幸という男が、只者(ただもの)ではないと思わせる。彼の発想力や物事を進めていく推進力に感心させられることしきりなのだ。店の面白さ、魅力、楽しさは、経営する人間のそれにガッツリと比例していた。

 のれんの向こうに昭和の古き良き時代が舞い降りた。

えすでぃこーひーきたせんじゅ
東京都足立区千住4-19-11
📞03・6806・1013
営業時間:午前11時30分〜午後6時(時短営業中)
定休日:火、水
文・今村博幸 撮影・JUN

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