新橋と昭和をこよなく愛する元会社員の夢の空間

 同ブックカフェが、改めて我々に語りかけるのは、昭和という時代の本質なのかもしれない。「あえて言うと、日本らしさがあった時代、日本らしさがあったと思います」。確かに、平成、令和を俯瞰(ふかん)してみると、「日本らしさ」は薄まっている気がしないでもない。「家長制度もかなりしっかり残っていたし(現在もなくなったわけではないが)、男性が威張っていた。女性が苦労した時代でもあったかもしれませんね」

個別の読書スペースでゆっくり読書ができる。漫画のキャラクターや芸能人の写真やポスターが貼ってあるのが面白い

 鈴木さんは続ける。「みんな働きすぎで、休まないのが美徳だった。『根性』という言葉が格好良かったっていう時代でもありましたね」。少しだけうつむいて鈴木さんは考えていた。「『日本式が通用した時代』、とも言えるかもしれません。ただ、通用しない結果に終わった日本式もあるので、昭和とは『日本式を主張した時代』と言ったほうが正確かもしれません」 夜は通信カラオケで歌うこともできる。ニュー新橋ビルでは「最大級のスクリーン」を標榜している。大ファンの石原裕次郎をまねてエアドラムをたたく鈴木さん

 戦争ではゼロ戦や特攻隊、戦後はソニーのウォークマン、トヨタのカンバン方式(ジャストインタイム方式の一つ)などを考えれば、良くも悪くも日本式が世界を揺るがした。

 店名に釣られるわけではないが、「昭和」という時代をもう一度考え直せる。さっぱりとした店内のカフェは、思ったより奥が深い。 

しょうわぶっくかふぇ
東京都港区新橋2ー16ー1ー3
14
烏森口側エスカレーター3F正面
📞:03-6550-8718
営業時間:(月〜金)午前9時半〜午後11時(L.O午後10時)
(土・祝)正午〜午後8時(L.O午後7時)
定休日:日曜

文・今村博幸 撮影・JUN